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2015年5月31日日曜日

ネトル

○ネトル(Nettle)

 セイヨウイラクサの和名を持つネトルは、葉や茎に有毒のヒスタミンを含む鋭いトゲがあります。うっかり素手でさわると激しい痛みが数日間は残ります。生で食べるべきではありませんが、乾燥させたものならトゲがとれているので、こういった心配はありません。

 茎からは、織物の繊維が取れます。アンデルセン童話にもネトルから糸をつむぐシーンが登場するくらいですから、広く活用されていた時代があったのかもしれません。

 どこか懐かしさを感じさせるような草の香りがするネトルのお茶は、ビタミン、ミネラルが豊富なので、多くの薬効があります。特に鉄分を多く含むことが知られ、貧血の予防に高い効果があります。婦人病(カンジダ膣炎など)の治療にも用いられ、月経時の出血量をコントロールする効果もあるといわれます。

 近年は、花粉症の治療薬としても注目されています。古くからアレルギー症の治療に使われていたネトルは、花粉症の諸症状も緩和します。ある機関が、花粉症の人にネトルを服用してもらう研究をしたところ、症状が軽くなった人が6割近くもいました。「花粉症の薬よりも効いた」という人も多かったそうです。鼻づまりや涙目など、花粉症のつらい症状に苦しんでいる人は、試してみてはいかがでしょうか。

 このほか、尿酸をとり除くので、関節炎、痛風、湿疹などにも効きます。血糖値を下げる効能も確認されているので、糖尿病の治療薬としても研究が進められています。

ネトルハーブティー

2015年5月29日金曜日

ダンディライオン

○ダンディライオン(Dandelion)

 もともと日本に自生していた在来種のニホンタンポポとは別の種類です。萼の形が違い、帰化種のダンディライオン(セイヨウタンポポ)は、外側の萼がそり返っています。ダンディライオンのほうが繁殖力が強いため、日本の都市部ではニホンタンポポは少なくなってしまいました。

 ダンディライオンはお茶は、葉を使うハーブティーと、炒った根をコーヒーのようにして飲むタンポポコーヒーの2種類があります。

 薬効は共通している部分が多く、まずどちらも強い利尿作用があります。体内の余分な塩分や水分を排出してくれるので、むくみが気になる人や血圧が高い人におすすめです。一般の利尿剤を使うと尿と一緒にカリウムも排出してしまいますが、ダンディライオンにはカリウムが豊富に含まれているので、心配がありません。

 鉄分も豊富なので、貧血の予防効果もあります。ほかにも多量のビタミンやミネラルを含むので、多くの薬効が期待できます。なかでも、肝臓や胆嚢の機能を高めることは古くから知られていて、黄疸などの治療に用いられてきました。ビタミンA・Cが豊富な葉のハーブティーは、ニキビや湿疹の治療にも有効です。

■タンポポコーヒーの作り方

1.洗ったダンディライオンの根を、先端を除いて5mm程度の厚さに切りそろえる。
2.低温のオーブンなどでよく乾燥させる。
3.弱火で、淡いコーヒー色になるまで炒る。
4.コーヒーミルでひく。
5.フィルターでこして飲む。

 タンポポコーヒーは、色や味わいは普通のコーヒーと変わりませんが、ノンカフェインのヘルシー飲料。好みにもよりますが、粉の量は、普通のコーヒーより少なめの量を目安にするとよいでしょう。乾燥させた状態で保存し、必要に応じて炒るほうが、風味を楽しめます。

ダンディライオンティー

2015年5月28日木曜日

セージ

○セージ(Sage)

 セージは、肉の臭みを消すうえに脂肪を分解する効果があるので、肉料理に使われることが多いハーブです。独特の風味も、味のアクセントになります。ソーセージなどに使われるのは、すぐれた殺菌効果もあるからです。

 属名になっている「salvia」が、ラテン語の「salvere(救う)」に由来するといわれることからもうかがえるように、セージの薬効は古くから知られていました。ギリシャ・ローマ時代には、万病の治療に用いられていたという記録も残っています。高い強壮効果があるので、回復期の病人にも用いられました。

 セージの葉は、乾燥させると灰緑色から銀灰色に変わり、独特の香りと苦みが一段と強くなりますが、これをお茶にするとぐんとマイルドな味になります。セージはお茶としても歴史が長く、17世紀にアジアから紅茶が輸入されるまでは、イギリスでも愛飲されていたといわれます。

 セージのお茶は、精神の疲れをとり、やる気と集中力を高める効果もあります。イライラするときや、気持ちがふさぎ込んでいるときにもおすすめです。ホルモンの働きを助ける効果もあるので、生理不順や更年期障害の諸症状もやわらげます。消化を促進する効果も高いので、ガスがたまっておなかが張っているときなどにもおすすめです。ただし、妊娠中にはあまり飲みすぎないこと。てんかん発作の引きがねになる成分が含まれている点も、注意が必要です。

 比較的育てやすく、美しい紫色の花が咲くセージは、鑑賞用としても人気があります。変種も多いほか、仲間のサルビア属は数百種もあり、エッセンシャル・オイル、お香、ポプリなど、幅広い用途に使われています。

セージティー

2015年5月27日水曜日

スペアミント

○スペアミント(Spearmint)

 ミントは交配が簡単なうえに雑種もできやすいので非常にたくさんの種類があり、分類の仕方もまちまちです。広く知られているものだけでも30種類ぐらいあるといわれ、寒さにも強いので、世界中に広く分布しています。どのミントも風味が似ているので、17世紀ぐらいまでは、区別せずに用いられていたといわれます。

 清涼感あふれる香りや刺激的な味が食欲をかきたてるうえに消化を助ける作用が強いので、肉料理や魚料理のほか、サラダ、デザートなど、幅広い料理に使われます。

 現在、ハーブティーにされるミントはそう多くありません。一般的なのは、このスペアミントと、ペパーミントでしょう。

 スペアミントのお茶は、ペパーミントのお茶に比べると、香りがおだやかで、まろやかな甘みが感じられます。ホットでもアイスでも飲みやすく、ミントティーのビギナー向きです。生葉を数枚入れてお湯を注ぐだけでも、簡単に風味が楽しめます。レモンバームなどのハーブやミルクと組み合わせてもおいしく、アレンジが簡単なのも魅力です。

 消化促進などの作用はペパーミントのお茶ほどは期待できませんが、飲みやすさで人気があります。リフレッシュ効果は抜群です。眠けを覚ましたいときや、集中力を高めたいときにおすすめです。

 スペアミントという名前は、並んだ花の形が槍(spear)に似ていることからつけられました。葉が鮮やかな緑色なので、日本ではミドリハッカとも呼ばれます。ローマ人がイギリスに伝えてヨーロッパ全域に広まり、ハーブ全体の中でも最もポピュラーな存在といわれます。

スペアミントティー

2015年5月26日火曜日

ジャーマンカモミール

○ジャーマンカモミール(German Chamomile)

 カモミールという名前は、「大地のリンゴ」を意味するギリシャ語に由来するといわれます。この名前が示すとおり、甘いリンゴのような香りが特徴です。カモマイル(和名:カミツレ)ともいわれます。4月ごろから咲き始める小さな菜花が、大きくなるにつれて中心の黄色の部分から特有の香りを発するようになります。

 原産地はエジプトで、ヨーロッパに伝わり、ハーブティーとして親しまれてきました。人気を支えてきたのは、フルーティーな味わいに加え、幅広い薬効があるためです。

 ヨーロッパでは、不眠症、神経痛、リウマチなどの治療に、数百年前からジャーマンカモミールが用いられてきました。婦人病の治療薬としての効果も高く、現在でも生理痛などの薬として使われています。

 消化促進の働きや鎮静作用が強いので、食べ過ぎたときや、リラックスしたいときにぴったりのハーブティーです。就寝前にジャーマンカモミールのお茶を飲むのもよいでしょう。子どもの最適なお茶としても知られます。

 ミルクとの相性がよいので、ミルクティーにして飲むのもおいしく、デザートなどにするのもおすすめです。ただし、子宮収縮作用があるので、妊娠中に多量に飲むのは避けること。

 いくつかの品種があるカモミールの中で、ハーブティーの材料としていちぱん一般的なのがジャーマン種です。このほかでは、ローマン種のハーブティーもよく飲まれます。この2種は見た目は似ていますが、ジャーマン種は一年草で、ローマン種は多年草です。どちらもリンゴに似た甘い香りがし、ローマン種のほうが少し苦みがあります。ローマン種は、花だけではなく葉にも香りがある点も違っています。

ジャーマンカモミールティー

2015年5月25日月曜日

オレンジピール

○オレンジピール(Orange Peel)

 オレンジピールは干したオレンジの皮のことで、洋菓子などに用いるときは違い、糖分を加えていません。オレンジには、ビターとスイートの2種類があり、どちらもオレンジピールのお茶にしますが、ビターオレンジのほうが、薬効がすぐれています。

 甘酸っぱさのあるフルーティーな香りのハーブティーは、かすかな苦味がさわやかに感じられます。すぐれた鎮静効果があり、眠れない夜に飲むとぐっすり眠ることができるでしょう。

 オレンジの甘くまろやかな香りは他のハーブの口当たりをよくしてくれるので、ブレンドティーにも向きます。

 消化促進や胃腸の調子を整える効果があるので、おなかがもたれるときや下痢ぎみのときにおすすめ。ストレスなどでおなかをこわしたりする過敏性腸症候群の症状を抑えるのにも有効です。

 柑橘類の薬効は古くから知られ、最も活用してきたのは中国だといわれます。干したミカンの皮を橘皮(きつひ)と呼び、その中でも時間がたったものを陳皮(ちんぴ)と呼んで漢方薬に用いています。陳皮は古くなったものほど薬効が高いと考えられ、重用されます。効能は、オレンジピールのお茶とよく似ています。

 西洋でも薬用の歴史は古く、16世紀に初めてエッセンシャルオイルが作られ、イタリアの女王が愛用したという記録もあります。当時は非常に貴重なもので、一般庶民には手の届かないものでした。現代でも、ビターオレンジのエッセンシャルオイルは高級品で、強い鎮静効果があり、下痢などにもよく効きます。

オレンジピールティー

2015年5月24日日曜日

エルダーフラワー

○エルダーフラワー(Elder Flower)

 エルダーは、古くからさまざまな薬効があるとされ、広く民間療法に活用されたきました。飲用、外用の両方に使われる万能薬で、その歴史はエジプト文明のころにまでさかのぼるといわれます。病気や悪霊を寄せつけない厄よけの効果があるとも考えられていました。

 エルダーの木は、大きなものはまれに10m近くまで成長します。5~6月ごろに枝からあふれるように咲く花はクリーム色がかった白い色。さわやかな甘い香りは、マスカットに似ています。根から実まですべてに薬効がありますが、リノール酸やフラボノイドが豊富な花を使ったハーブティーは、手軽に楽しめてすぐれた薬効があります。

 最も知られているのが、カゼやインフルエンザの諸症状を緩和する効果です。甘い香りのエルダーフラワーのお茶は、のどの痛みをやわらげ、発汗作用を促します。目の充血やアレルギーなど、花粉症の症状も緩和してくれます。濃くいれたエルダーフラワーのお茶を、うがい薬として使うのも効果的です。

 シングルで飲んでもやさしい味わいが楽しめますが、ブレンドティーにするのもおすすめ。ほかのハーブと組み合わせてもよいし、好みの紅茶に少し加えるだけで、違った風味になります。エルダーフラワーに砂糖を加えて作るコーディアル(砂糖水)は、ヨーロッパでは子供向けのカゼ予防薬です。

 外用薬としてのエルダーフラワーは炎症を抑える効果があり、抽出液で作った湿布は、しもやけや皮膚炎にも効き目があります。化粧水として使えば、ニキビや吹き出物を改善する効果があります。種には毒があるので、生では食べないこと。ドライハーブなら種でも安全です。

エルダーフラワーティー